モジュール式機体構造「TMRS」
TSRPのロケットは胴体構造にFRP(繊維強化プラスティック)製のモジュール式構造を採用しています。 モジュール式にすることによってモジュールごとの組み立てと再利用が可能になり、高い運用性と部品製作のためのコストを削減することに成功しています。
現在は直径120 mmのTMRS120、150 mmのTMRS150、180 mmのTMRS180が存在し、2009年に打上げたH-19から現在までほぼ全てのロケットで採用されています。 材質のFRPはGFRP(ガラス繊維強化プラスティック)を用いて薄肉部と厚肉部を組み合わせ、モジュール毎に使い分けています。
モデル:TMRS150
無火薬式分離機構
ロケットからパラシュートを放出するためには、ロケット先端のノーズコーン(フェアリング)をロケット本体から分離させなければなりません。 海外の2 m前後の小型ロケットの場合、火薬を使用して分離を行うことが一般的ですが、TSRPでは再利用性があり、火薬の管理が必要ない無火薬式分離機構を使用しています。
TSRPの無火薬式分離機構には「不知火」の名前が付けられています。 不知火シリーズの特徴はバネの力でノーズコーンを分離させている点と、縮めたバネをロックするための仕組みにエアシリンダを使用している点です。 現在は不知火IIIと不知火IVが使用されており、1回だけパラシュートを放出するミッションでは不知火IIIのみが使用されます。
不知火IIIはフライトでの分離成功率100%の信頼性を誇っており、TSRPのロケットだけでなくUNISEC共同開発ロケットUNISTARにも採用された実績があります。 不知火IVは不知火IIIの上部に取り付けることによって二段階開傘システムにすることができます。
モデル:不知火Ⅲ
自主開発エンジン
TSRPのロケットエンジンはハイブリッドロケットと呼ばれる種類です。 ハイブリッドロケットは酸化剤には液体を使用し、燃料には固体のものを使用したロケットのことで、従来から一般的に使用されている固体ロケットや液体ロケットと比較して安全性が高いという特徴があります。 また、火薬を使用していないので取り扱いも簡単です。 これらのメリットから学生が扱うロケットとしてよく採用されています。
TSRPではハイブリッドロケットを自主開発しており、開発されているエンジンには「THR」の名前がついています。 THRシリーズの特徴は酸化剤に液化亜酸化窒素を使用していることと、燃料にワックス(蝋)を使用している点です。 現在は300 N級、600 N級、1 kN級、2 kN級のモデルが存在し、数多くの打上げと地上試験での高い運用実績が存在します。
モデル:THR-210L
統合型搭載計器「すばる」
2019年まで運用していた搭載計器の設計を参考にしつつ、各機能ごとに一部の設計を共通とし「モジュール化」を実現した搭載計器です。これにより、挑戦的、教育的な目的のモジュールを打上げ実験によらず組み込みやすくしています。それぞれのモジュール間はCAN(Control Area Network)通信を採用しデータのやり取りが可能です。LoRa という規格を用いた無線通信も搭載し、ロケットが取得したデータを地上に送信するテレメトリーの機能も備えています。
TSRP ではこの搭載計器を「すばる」と呼称し現在までに「すばる1.0」、「すばる1.1」、「すばる1.2」を開発してきました。
今後はより高高度、高信頼性の実現を目指して開発を行っています。
モデル:すばる1.1
ランチャー
ランチャーはTSRPにて開発・運用を行っている吊り下げ式のロケット発射台です。全長 5.3 m、全高 5.2 m、全幅 3 m と TSRP が所有する中で最も大きい構造物です。
すべての部品に市販品を用い、組み立てにはクレーンなどの特殊作業を必要とせず、手作業で搬入出、組み立てを行うことが可能です。第 11 回能代宇宙イベントではこのランチャーを用いて他大学のロケット打上支援を行いました。その運用性の高さから、秋田県能代市で毎年行われる能代宇宙イベントにて同設計のランチャーが2基、共同使用ランチャーとして運用されています。
モデル:TSRP Launcher
モデルの寸法は正確なものではない可能性があります。